普段使っているWiFiルーターを見ると、SSID(ネットワーク名、WiFiの名称)の文末に「G」が付いているものと、「A」が付いているものがあります。
何となく使っているものの、「G」と「A」の違いがよく分からない、という人も多いでしょう。
今回は、WiFiの「G」と「A」の性質や違い、効果的な使い分け方について詳しく解説していきます。
WiFiの「G」と「A」の違いって何?
現在、家庭用に普及しているWiFiの電波は、主に「~G」と「~A」の2種類が使われています。
それぞれ電波の性質が異なるため、うまく使い分けることで家庭のWiFi環境が改善される可能性も高いです。
まずは「G」と「A」の電波の違いについて確認しておきましょう。
「G」の電波は障害物に強いが、電波干渉を起こしやすい
まず「G」の付く電波は、2.4GHzの周波数帯を使っており、障害物に強くて遠くまで届きやすいという特徴があります。
「A」の電波に比べると、壁や床などに囲まれている場所でも電波が弱くなりにくいため、ルーターから離れた部屋でも比較的繋がりやすいです。
しかし、この2.4GHzという帯域は、電子レンジ等が発する電波でもあり、Bluetoothに対応している家電製品も使用する周波数帯。
周波数の近い電波が複数発生していると電波干渉が起きるため、2.4GHz帯を使用するWiFiルーターの近くに家電製品があると電波が弱まってしまいます。
2.4GHzの電波を使用する「G」のWiFi規格は次の通りです。
- IEEE 802.11b
- IEEE 802.11n
- IEEE 802.11ax
まとめると、「G」のWiFi規格は遠くまで届きやすく障害物の干渉も受けづらいものの、家電やBluetooth対応機器による電波干渉を受けやすくなるという特徴があると言えます。
「A」の電波は障害物に弱いが、高速通信に向いている
一方、WiFiの「A」は5GHzの周波数を使用する電波で、「G」に比べて帯域幅が広いため高速通信が可能です。
他の機器で5GHzを使用することはほとんど無く、家電製品等の電波干渉を受けにくいですが、周波数の高い「A」の電波は障害物の影響を受けやすいデメリットがあります。
したがって、ルーターから離れた場所や障害物の多い場所では繋がりにくくなることも。
例えば、2階の部屋でWiFiに接続する時に「G」は繋がっても、「A」では電波が弱く感じたり、繋がらなかったりするのは、そのせいです。
以上をまとめると、「A」は「G」のWiFiに比べると、高速通信に向いていますが、部屋のあちこちまで電波が届きにくく繋がりにくいこともあるのが特徴だと言えるでしょう。
なお、5GHzの電波を使用する「A」のWiFi規格は次の通りです。
- IEEE 802.11n
- IEEE 802.11ac
- IEEE 802.11ax
2.4GHzと5GHzの両方で登場している「IEEE 802.11n」と「IEEE 802.11ax」は、どちらの周波数でも使用できる便利な規格でもあります。
WiFiの「G」と「A」はどんな基準で選べばいいの?
WiFiの「G」と「A」に関する基本的なポイントを確認したところで、実際にどのように使い分ければ良いのかを見ていきましょう。
現在販売されているWiFiルーターはどちらの規格も使用できるものが多いので、状況に応じて適切に使い分けることが大切です。
基本的には障害物に強い「G」を選ぶ
WiFiの「G」つまり2.4GHzのタイプは、障害物に強くて通信が安定しやすいという特徴があります。
つまり、床や壁が多い屋内で使用する際は「G」を選んでおくと、障害物に弱い「A」よりも電波が届きやすくなるため、家のどこからでも無線通信の利用が可能です。
ただ、電波干渉が起こる可能性もありますので、電子レンジなど同じ帯域を使う家電の近くでにWiFiルーターを設置するのは避けたほうが良いでしょう。
接続する機器が多い時は「A」を選ぶ
WiFiの「A」は高速通信が可能であると同時に、複数の端末への通信も高速で行いやすいタイプです。
「G」は現在のように様々な機器がWiFiに接続するようになる前に登場した規格なので、IEEE 802.11acに代用される5GHzの方式と比べると、複数端末を接続したときの処理速度という点では劣ります。
ですから、複数の機器を接続する必要がある場合は、「A」の方を選ぶようにすると良いでしょう。
電波干渉で接続が不安定になる時は「A」に切り替える
先ほど述べた通り、WiFiの「G」は家の中のどこでも比較的安定した通信が可能ですが、電波干渉を受けやすいという欠点もあります。
2.4GHz帯でWiFiを使用していて、繋がりにくいことや通信が不安定になることがある場合は、5GHzの「A」に切り替えると良いでしょう。
5GHzを使うと他の機器の干渉を気にする心配がなく速度も高速なので、快適な通信が可能になります。
ただし、5GHz帯は障害物の影響を受けやすいので、電波が効率的に届くようにするためにルーターの設置位置に工夫が必要です。
電波の障害に特になりやすい金属や水の周りを避けて、1mくらいの高さで壁から離すように設置しましょう。

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「G」や「A」以外の「GW」や「AW」との違いは?
主に使われているWiFiの電波は「G」と「A」の2種類ですが、その他にも「GW」や「AW」という特殊なものがあります。
ただし、「GW」や「AW」といった種類の規格にはセキュリティ上の問題があるため、通常は「G」や「A」を使うのがおすすめです。
「GW」や「AW」の概要についても確認していきましょう。
「GW」は「G」と同じく2.4GHzだが、「G」に比べて速度が遅い
「GW」の通信は「IEEE 802.11g」という規格で使用されています。
基本的には「G」と同様に2.4GHzの電波を使用するため、障害物に強くて安定した通信ができるという点が特徴です。
しかし、GWは古い規格であるため通信が低速で、通信の暗号化方式も「WEP」という古い形式なためセキュリティ上の問題もあります。
「AW」は「A」と同じく5GHzだが、「A」に比べて速度が遅い
「AW」の通信は「IEEE 802.11a」という規格で使用されています。
こちらは「A」と同様に5GHzの電波を使用するため、高速通信が可能で障害物の影響を受けにくい方式です。
しかし、AWは古い規格であるため「A」と比べると通信が遅く、「GW」のようにセキュリティ上の重大な欠陥があります。
「GW」と「AW」よりも「G」や「A」を使うようにして
前述したように、「GW」と「AW」はどちらも古い規格で、通信速度が遅くてセキュリティ上の脆弱性があります。
特に、WiFiのパスワードを簡単に解析されてしまうという問題は深刻で、個人情報が漏洩してしまう危険性も。
そのため、現在では古い機器をどうしても接続する必要がある以外は、ほとんど使用されることがありません。
無線通信の「GW」や「AW」という規格については気にしないようにして、「G」や「A」を積極的に使っていくようにしましょう。


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接続を切り替えても電波の弱さや速度の遅さが改善されない時は?
ここまで、通信の安定性を重視する場合は2.4GHzの「G」を、速度や電波干渉を気にする場合は5GHzの「A」を使用する方が好ましいことを解説しました。
しかし、接続を切り替えても通信状態がよくならないこともあります。
そんなときは、中継器を使用するか高性能なWiFiルーターに買い替えるなど、対策を取ってみましょう。
WiFiブースター(中継器)を設置して電波の届く範囲を広げる
「WiFiブースター」は中継器とも呼ばれ、ルーターが発信した電波を中継して端末まで送り届ける機器のことです。
WiFiブースターを使うことで、電波の弱さが改善されて障害物の影響を受けづらくなるため、より遠くまで電波が届くようになって通信が安定します。
例えば、1階にルーターを置いて2階で5GHz帯にて端末を利用したいという場合、WiFiブースターは特に有効です。
壁や床を隔てた2階の部屋では5GHzの通信が不安定になることがありますが、WiFiブースターを活用すると高速かつ安定した通信が可能になります。
ただし、使用中のルーターの対応規格と一致していない通信はできないので、購入前に確認しておきましょう。

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また、WiFiブースターを選ぶ際は「デュアルバンド同時接続」に対応している機器を選ぶことも大切です。
デュアルバンド同時接続とは、上流(ルーターから中継器)と下流(中継器から端末)の通信で、2.4GHzと5GHzの2つを同時使用できる方式のこと。
通常の1つの方式しか利用できないタイプでは、上流と下流で電波を共有するため通信速度に制限が出てしまいます。
デュアルバンド同時接続なら転送速度を下げずに中継できるので、WiFiブースターの効果を最大限に高めることができるでしょう。
より性能の良いWiFiルーターを購入する
古いWiFiルーターは新しい規格に対応していないため、どうしても通信速度や安定性で見劣りする部分があります。
接続方式や設置場所を見直しても通信が良くならない場合は、より新しく高性能なルーターに買い替える方が良いでしょう。
例えば、最新のスマホでは「IEEE 802.11ax (WiFi 6)」と呼ばれる最先端の規格に対応しているものもありますが、古いルーターではその性能を活かすことができません。
通信速度や安定性の他にも、同時に接続可能な数やセキュリティ規格など便利さや安全性も考慮に入れることが、長く使い続けられるルーターを選ぶコツです。
より高速で快適な通信を楽しむために、使用中の端末に合うWiFiルーターの購入を検討してみましょう。


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「G」と「A」をうまく使い分けて快適にWiFiを使おう
WiFiの「G」と「A」の違いと、その性質や使い分け方について確認してきました。
WiFiの「G」は2.4GHzで障害物の影響を受けにくく、基本的にはこちらを使うのがおすすめですが高速通信にこだわるなら5GHzの「A」を使うのも良いでしょう。
まあ最近では自分でいちいち「A」と「G」で設定をしなくても、最適なWiFiの方に自動で切り替えてくれるルーターも登場しているので、そこまで悩む必要も無くなってきてはいますが…。
それでも家族や友人が「GとAのどちらに接続するのがいいかな」と困っているようであれば、「基本はGに接続したらいいよ」と教えてあげると喜ばれるかもしれません。
ぜひ今後の参考にしてください。